「生前贈与の110万円って、なくなったんですよね?」 最近、そんな不安の声をよく聞きます。結論からお伝えします。廃止されていません。 ただし、2024年の改正で”使い方”は大きく変わりました。この記事を読めば、その変化と、あなたが今すべきことが3分で整理できます。
結論:110万円の非課税枠は廃止されていません
まず、一番不安な点にお答えします。
年間110万円まで贈与税がかからない「暦年課税」の仕組みは、2026年現在も廃止されていません。
「廃止された」という噂が広まったのは、2024年1月から始まった税制改正がきっかけです。ですが、実際に変わったのは”非課税枠そのもの”ではなく、「相続が起きたときに、過去の贈与をどこまでさかのぼって相続財産に足し戻すか」というルールです。
つまり、110万円の枠は今も使えます。変わったのは「その枠をどう使えば、本当に相続税の節税につながるのか」という戦略の部分。ここを理解しないまま贈与を続けると、”思ったより節税にならなかった”という結果になりかねません。
順番に見ていきましょう。
では何が変わったのか?2024年改正の3つのポイント
変更点①:持ち戻し期間が「3年」から「7年」に段階的に延長
これが今回の改正の核心です。
亡くなる前の一定期間内に行われた贈与は、相続税の計算上、相続財産に足し戻されます(これを「生前贈与加算」または「持ち戻し」と呼びます)。この足し戻しの対象期間が、従来の「相続開始前3年」から「7年」へと延長されました。
ここで重要なのは、いきなり7年になるわけではなく、段階的に延びていくという点です。詳しくは次の早見表で整理します。
さらに、延長された分(3年を超えて7年以内の部分)の贈与については、その合計額から100万円を差し引いた金額が加算対象になります。全額がそのまま足し戻されるわけではない、という緩和措置です。
変更点②:相続時精算課税に「年110万円の基礎控除」が新設
贈与税にはもう一つ、「相続時精算課税」という制度があります。この制度に、2024年から新たに年110万円の基礎控除が設けられました。
この新しい110万円枠が優れているのは、この枠内で行った贈与は、相続のときに足し戻す必要がないという点です。暦年課税の110万円が「7年以内なら足し戻される」のに対し、相続時精算課税の110万円は足し戻し不要。ケースによっては、こちらの方が有利になることもあります。
ただし、相続時精算課税は一度選ぶと暦年課税に戻せません。この不可逆性が、制度選択を難しくしている最大の理由です。
変更点③:関連制度も変化している
生前贈与にまつわる制度は、ほかにも見直しが続いています。たとえば教育資金の一括贈与の非課税措置など、期限が定められているものもあります。関連制度は年度ごとに変わるため、「去年は使えた制度が今年は使えない」ということも起こり得ます。
【早見表】いつ相続が起きると、何年分が持ち戻される?
段階的な延長は少しややこしいので、表で整理します。「いつ相続が発生するか」で、足し戻される年数が変わるのがポイントです。
| 相続が発生する時期 | 足し戻しの対象期間 |
|---|---|
| 2024年1月1日 〜 2026年12月31日 | 相続開始前 3年(従来どおり) |
| 2027年1月1日 〜 2030年12月31日 | 2024年1月1日〜相続開始日(3年超〜段階的に延長) |
| 2031年1月1日 以降 | 相続開始前 7年(完全適用) |
この表から見えてくる大事なことが一つあります。
2026年は、まだ「3年ルール」が維持されている最後の時期だということです。裏を返せば、2027年以降に相続が発生した場合、2024年1月1日以降の贈与がすべて加算対象になっていきます。
なぜ「2026年のうちに動くべき」なのか
ここまでを踏まえると、贈与を検討している方にとって、2026年は一つの節目だと言えます。
持ち戻し期間が短いうちに、計画的に贈与を始めておくことが、結果的に相続税の負担軽減につながりやすいからです。「まだ元気だから」「まだ先の話だから」と後回しにしているうちに、加算対象の期間はどんどん延びていきます。
とはいえ、「では今すぐ贈与すればいい」という単純な話でもありません。贈与のペース・金額・使う制度は、ご家庭の事情によって最適解がまったく異なるからです。
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暦年課税と相続時精算課税、結局どっちが得?
一般的な傾向として、それぞれの向き・不向きを整理すると次のようになります。
暦年課税が向きやすいケース(一般論)
- 相続まで比較的長い期間があり、毎年コツコツ贈与を続けられる
- 贈与したい相手が複数いる(子・孫など)
相続時精算課税が向きやすいケース(一般論)
- まとまった財産を早めに移したい
- 年110万円の非課税枠を”足し戻し不要”で活用したい
ただし——ここが最も大切なポイントです。
どちらが有利かは、財産の総額・家族構成・贈与する方の年齢や健康状態によって、一軒一軒まったく異なります。 そして相続時精算課税は一度選ぶと元に戻せないため、選択を誤ると取り返しがつきません。インターネットの一般的な情報だけで判断してしまうと、思わぬ落とし穴にはまることも少なくありません。
だからこそ、実際に動き出す前に、一度プロに”あなたの場合”を整理してもらうことをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
Q. 年間110万円以下の贈与でも、申告は必要ですか? A. 1年間にもらった財産の合計が110万円以下であれば、贈与税の申告は原則不要です。110万円を超えた場合や、相続時精算課税を初めて利用する場合は、原則として翌年の2月1日〜3月15日に申告が必要です。
Q. 毎年同じ金額を贈与すると「まとめて贈与した」とみなされると聞きました。 A. あらかじめ「総額いくらを何年かけて贈る」と約束していたとみなされると、贈与の扱いが変わる可能性があるといわれています。個別の判断は専門家にご確認ください。
Q. 110万円の非課税枠は本当に廃止されないのですか? A. 2026年時点で、暦年課税の110万円基礎控除そのものは廃止されていません。ただし税制は毎年見直されるため、最新の状況は都度ご確認ください。
まとめ
- 生前贈与の110万円非課税枠は、2026年現在も廃止されていません
- 2024年から、相続前贈与の持ち戻し期間が3年→7年へ段階的に延長されています
- 相続時精算課税にも年110万円の非課税枠が新設され、選択肢が広がりました
- どの制度をどう使うかはご家庭ごとに最適解が異なり、一度選ぶと戻せない制度もあります
- 2026年は3年ルールが残る節目。早めの計画がカギになります
制度は「廃止」ではなく「変化」しています。だからこそ、正しく理解して、早めに動き出すことが、あなたの大切な想いと財産を次の世代へつなぐ一番の近道です。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務に関する助言ではありません。当サイト「想続」は税理士業務を行うものではなく、具体的なご相談は提携税理士が対応いたします。税制は改正される場合があります。最新かつ個別の取り扱いについては、税理士等の専門家にご確認ください。